久しく無かった遠方への出張のお土産は、贅沢さを研ぎ澄ました至極の時間であった。
決算月の追い込まれる状況下で、敢行される強行軍・・・・無用な心配はやはり、それそのものの取越し苦労であった。
今回の目的地は、福岡空港より空路で北東の方角へ2時間弱の「加賀百万石」の地である。
前日まで連日連夜続くオーバーワークの為、機中での記憶はほとんど無いほどに熟睡し、意識も虚ろに空港施設の外へ出る。
明らかに違う、「風」が数百キロの距離であったり、ビジネスとしての時差を生じさせ、一気にモードが切り替わる。
足早に向かった先の支局庁舎は、それらの空気感の延長線上に存在し・・・・、間違いなく異国であり、また、自身の時間と真逆で成立する世界そのものである。
人肌が恋しく、ついつい語りかけ何かを求めるその自身の深層心理は的確に、鬱積する何かを払拭したいが為の行動であることは明らかである。
夜のアポイントまでの12時間弱は、納品を心待ちにするお客様には申し訳ないが、全てが、今日のこの日の自身へ対し与えられし時間なのである。
能登半島に位置するこの地に来て欲することはただひとつ・・・日本海を訪れることである。
給油所でハイオクを満タンにし、語りかける残暑の爽快な日差しをナビゲーターに、黙々と海の方角へと車を走らせる・・・。
・・・・・これ以上は多くを語る必要の無い・・・言葉の概念が無意味な位の贅沢なひと時で・・・・
この夏の終わりはやはり、何者かに与えられしものなのだろう・・・・。