Suddenly Come out

皐月晴れというには少し暑すぎる1日を終え、数年かけて完成した「未完の作品」へ乗り込み、少しだけアクセルを煽るべく夜の帳へキーをひねる。

とはいえど、昼間の暑さとは裏腹に夜風は半袖のシャツとデニムでは肌寒いくらいに感じられ、踊る心と比例させて開けていくスロットルの面積の大きさを、増やせば増やすほど、左頬を掠める疾風は段々と寒さえと変わっていく。

山手へ向かって舵を切り、少しづつ眠りから覚ますための儀式を繰り返すように、トランスミッションのうめき声を避けるべく、まさに、慎重、そしてアグレッシブにダブルクラッチをあてながら、ギヤを一段一段順序よく上げ下げを繰り返す。

程なく、自身とのシンクロが完了する頃には、タコメーターは5000回転オーバーを維持すべく、小刻みなシフト操作とともに山の中腹へ向けてスピードを乗せていく。

まるで、人馬が一体となったかのように、、、

まさに、静寂が闇に広がる、、、古いが故の融通の幅のお陰で、なんとか麓近く、、、今日は自身の機嫌がいいのか、はたまた送るべく出来事をすでに期待して出発したのか、今となっては、あの頃の自身に問う気もないが、レッカーを待つ心も踊る五月の某日。

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