程よい冷気が、普段の鼻通りの悪さを忘れさせてくれるほどの澄み切った如月の末日、人生で初めての自力単独での「引越し」である。
この年になって、まだ初めての事を告白するこの状況が少し恥ずかしく感じるのは、何に起因するものなのだろうか。
物音に階下ををベランダより見下ろすと、この場所独特の「無人地帯」よろしく、ひとつの空き缶が往来のない道路を延々と右往左往を繰り返している。
そういえば、ほほに感じる風がしっかりとしている気がする。
玄関近くまで伸びてきそうな日差しの明るさも、開け放った窓から精一杯拭く込んでくるこの風の肌感も、3年近くの時間と一緒にこの場所に置き去りにして行こうと思う。
そういえば、もうすぐ春になるんだ・・・・。
深い意味もなく、ただ何と無くセンチメンタルな如月の某日。