もう一つの誕生日

あえて・・・、在り来たりの言葉で語り始めるならば、あの頃に想像出来なかった自身が又、この日を迎えた・・・と言う所であろう。

日もすっかり落ち、納品の為に向かった車中で、突然思い出した。
「弊社の創立記念日であること・・・」
社の急速な成長と、当然の如く決算と・・・複合する多くの物事の中に、いつも置き忘れてしまいそうになるこの日・・・それでもやはり・・・自身の中でも特別な一日である。
時期的なものか・・・、誰に祝ってもらうでもなく淡々と過ぎ去るこの日のこの瞬間に、今現在の自身と、数年前の今日の自身が、出先の車中より見上げる・・・少し早く流れ去る、天空の無数の輝きに、少なくとも今のこの時間だけは、より澄みきって感じてしまう。
納品後の帰り道・・・少し遠回りをすることに何のためらいもなく、岐路と逆へとハンドルを握るその意図は、この瞬間を起点とする自身へ対する、交錯した色々な想いがそうさせるのだろうか・・・。
大声を出したくなる感情を跳ね除けるかのように、床いっぱいまでアクセルを踏みつけるも、やはり抑圧できない感情が大声となって吐き出される。
今日のこの日まで、無事に生きながらえた強運と、又繰り返されるのであろう来る時間に向かって・・・深夜の山間の一車線道路を、当て所なく車を流す。

自らの意思で引き起こされる、新しい予感にも・・・今はただ、淡々と車を流し続けるのみである。

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