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初夏の中日に・・・

14be5519%5B1%5D.jpg 夕暮れのガレージの・・・、其の奥まで届きそうなくらいの夕日が、今日は少しだけ、いつもの夕刻時と違って感じさせてくれる。

 つい最近には珍しく、少し雲の多いスィエルヴワテュールの空は、少しだけセンチな時を刻み続ける。

 自身の足元に伸びる其の影の先には、今日嫁ぐ愛娘の後姿が、逆光のせいだろうか、つい少し前より眩しく輝き、感覚的に直視できずに、不意に目線をそらしてみる。

 時を同じくした今までも、今刻まれる時計の短針が指し示し始めるこれからも・・・何も変わる事が無いはずなのに、やけに穏やかに・・・世知辛く動き続ける様に感じるのは、きっと自身の想い過ごしに違いない。


 伝えてみたい多くの想いの、どのくらいを伝えてあげれたのだろうか・・・。

 行く先々で、巡り合う沢山の愛情の意味が理解できるのだろうか・・・。

 今日訪れるこの瞬間が、後悔のない時として永遠に成立するのだろうか・・・・。

 不思議なくらいの折重なり合う想いが、中々纏まらない・・・・。

 夕刻の窓ガラスのフレームからは、少し赤焼けの暮れかけた太陽が・・・、ディスクに差し込む明かりと、スピーカーより流れ出る静かなリズムと重なり合い、尚も又感傷的感情を引き出させる一枚と化す。


 すっかり日も落ち、嫁ぐ先の家族との歓談の言葉さえも、今だけは虚空の空間に投げ出される文字の羅列でしかなく、それでも真逆で感じる、新しい家族の愛情の断片が、長きにわたり費やした苦労の連続の治癒薬としては十分すぎて・・・、それでも、過ごした時の長さだけ感慨もいっそう深く・・・・

 数歩先の・・・、その歩幅の先に、・・・車のドアが奏でる其の音とは裏腹に、ゆっくりときつく開けられたドアのその先で、捻られたキーから奏で始められる静かな其の鼓動が、その瞬間の感傷を断ち切ったかに想えた・・・。

 相対的時の流れと裏腹に、静かに滑り出す彼女の全身は・・・、実を言うと、彼女と出会うそのずいぶんと昔から、すでに私のものではなく・・・間違いなく新しい家族の為のものであったような気がする。

 きっと・・・、出会う次の機会には、屈託無くさり気ない笑顔で逢える様、闇天に流れるテールの明かりに少しだけ長く一礼を奉げる。

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